解離性同一性障害は、多重人格障害と呼ばれていた精神障害のひとつです。1人の人物のなかに、2人以上の、性別・年齢・記憶も違う人格が交代で現れる症状を特徴としています。
一般の方にお話ししますと、え?本当にそんな病気があるの?と反応されることが多々あります。実は、本人は大変に苦しいのに周りの理解が進んでいない病気のひとつなのです。
それどころか、本人ですらこの病気に気づかないこともある、とらえどころが難しい病気でもあります。
この記事では、この病気の症状や原因をまとめ、本格的な改善への第一歩をご案内いたします。
今日踏み出すのは、たったの一歩です。しかし、あなたやあなたの大切な人の明日を変える大変に大きな一歩となります。ともに、歩みだしてみませんか?
目次
①解離性障害とは?
まず「解離」とはなんでしょうか。私たちは、自分の記憶や意識、または感覚を、常に自分のものと感じて生活しています。
「解離」とは、これが途切れてしまい、自分の意識と現実が切り離された状態になってしまうことです。ゲームや読書に熱中するあまり呼びかけても聞こえていない、という経験がある方は多いと思います。
これも解離の状態にあると言えますが、これは誰にも起こりうる正常の範囲となります。解離が大切な記憶や言動に影響し、生活に支障が出る状態が解離性障害という疾患です。
解離性障害にはいくつかの種類がありますが、なかでもいちばん深刻なのが今回お話しする解離性同一性障害です。
②解離性同一性障害の症状とはどんなもの?
「何かおかしい気がする」と感じつつも、気づきにくい解離性同一性障害。まずは、気になる症状をチェックしてみましょう。
✔️誰かに操られている気がする
✔️自分の中から、人の声が聞こえる
✔️体が乗っとられている気分になる
✔️いきなりどこかへ走り出すことがある
✔️自分の言動を、覚えていないことがある
✔️知らないあいだに、自傷行為をしてしまうことがある
ひとつでもチェックが付いた方は、解離性同一性障害の可能性があります。この疾患の症状を、3つに分類して詳しくご紹介します。
2-1:解離性障害の心の症状
大切な出来事や重要な個人情報など、通常なら簡単に思い出せるはずの記憶を全く思い出せないことがあります。抑うつや不安などの症状もみられ、日常生活に支障をきたします。
2-2:解離性障害の体の症状
感情の調整がうまくいかず、行動面にも様々な影響を及ぼします。摂食障害や不眠、薬物やアルコールへの依存、てんかんに似た症状などが現れることもあります。また、自傷行為につながることもあります。
2-3:解離性障害のその他の症状
幻視や幻聴を伴うことがあります。このため、統合失調症と間違われるケースがあります。
③解離性同一性障害には、種類がある
解離性同一性障害には、
・憑依型
何者かに支配されている感覚になる。少しスピリチュアルな要素が含まれています。
・非憑依型
自分自身が映画を見ているような感覚になり、誰かに乗っ取られている感覚は薄いと言われています。
もっと詳しく、非憑依型、憑依型の解離性同一性障害の症状について詳しく読み進めてみましょう。
3-1:解離性同一性障害の憑依型
別の人格に支配される状態になります。明らかに普段とは全く違う話し方や行動をします。まるで別人格が乗り移ったかのように見えます。
多くの文化や宗教の中で憑依現象はみられますが(例・イタコや巫女など)、これらは病気とみなされません。解離性同一性障害で現れる別人格は望ましいものではなく、社会的に困った状況でたびたび現れ、強い苦痛や障害となります。
3-2:解離性同一性障害の非憑依型
自分の意識はありながらも、自分の会話や行動を、あたかも映画でも観ているかのように傍観している状態となります。
ある意味、自身をコントロールすることができません。操られていると感じながら、自分のものとは思えないことを言ったり、思いがけない行動をしたりしてしまいます。多くの場合、第三者からは別人格が存在することがわかりません。
④解離性同一性障害の、原因は?
この病気を発症する原因はひとりひとり違いますが、強い精神的ストレスを受けていることは共通しています。具体的に、どのようなストレスが原因となるのでしょうか。主に3つをあげてみました。
4-1:トラウマ
特に小児期に、耐え難く強いショックを受けた方が発症してしまうケースです。性的暴行や虐待、いじめなどは、自分ひとりで抱えることができず圧倒的なストレスとなります。
加えて、周囲の誰をも頼ることができない状況が発症の可能性をますます高めてしまうことが弊社のクライアントデータから判明しました。
4-2:家族関係
解離性障害の方には、家族関係が良好でないケースが多くみられます。
例えば、
・ネグレクト
・両親の不和
・親による虐待
・過保護でありながら高圧的な態度をとる両親
といった、安心できる場所がない環境は、小児に強いストレスとなります。両親に対して抱えた強い恨みや寂しさが発症の大きな要因となります。下記の4-3と類似してきますので、併せてお読みください。
4-3:自分の意思を言えない
弊社に解離性同一性障害のご相談にいらっしゃる方の6割に、「自己主張できない自分の代わりに、第三者を創造して物事を伝える」という言動が目立ちました。
すなわち、「言いたいことが、言えない」「伝えても、受け入れてもらえない」という意識を強くお持ちの状態です。このため、本人の自覚なしに、潜在意識が「言いたいことを言える」別の人格を創り出してしまいます。
また、厚生労働省が掲載しているサイトでも下記のように提言されています。
かつて多重人格障害と呼ばれた神経症で、子ども時代に適応能力を遥かに超えた激しい苦痛や体験(児童虐待の場合が多い)による心的外傷(トラウマ)などによって一人の人間の中に全く別の人格(自我同一性)が複数存在するようになることをさします。参考:厚生労働省e-ヘルスネット
このように、幼少期の環境、トラウマが原因で解離性同一性障害という状況を引き起こしやすくなります。
⑤解離性同一性障害の治療って?
では、解離性同一性障害の回復へのステップにはどのような方法があるのでしょうか。現在、行われているものをご紹介します。
5-1:精神科で薬物療法を受ける
解離性同一性障害は、医師の診断のもとで保険が適用される疾患です。保険診療ならば、初期の費用負担を抑えることができます。ただ、研究途上の疾患であり、医学的治療法は確立していません。
解離性同一性障害そのものを治療する薬は現状ありませんが、抑うつや不安の症状をおさえるために、PTSDやうつ病の薬を使うことがあります。
統合失調症と間違いやすい疾患ですが、統合失調症の薬を服用していると悪化するといわれていますので、専門医による慎重な診断が欠かせません。しかしながら、根本には心の傷が大きく影響をしているのでカウンセリングとの併用をすることにより状況の回復を素早く行うことができるようになります。
5-2:カウンセリングを受ける
解離性同一性障害の原因となっているのは、深い心的外傷(トラウマ)やストレスです。そこで、カウンセラーとともに対話やワークを通じて問題点をとらえ、病気の根本原因になっている心の傷と向き合い、受け止め、癒していきます。
この病の治療に取り組める専門機関がまだ少ないのが現状ですが、弊社では経験豊富なカウンセラーや心理士が本格的なケアに取り組んでいます。
5-3:タッピング
リラックスして座り、両膝を軽く交互に叩きながら、潜在意識のなかの別人格を呼び出して対話し、最終的には人格の統合を目指す心理療法です。ご自身で行うこともできますが、難しい場合や深いトラウマの場合は専門家によるケアがおすすめです。
5-4:EMDR
EMDRは、近年開発された新しい技法です。眼球を動かすなどの刺激とともに疾患の原因となったトラウマ記憶に向き合い、処理していきます。
専門のトレーニングをした臨床心理士や公認心理士による施術を受けるのが一般的です。カウンセリングなど他のケアとの組み合わせで行うこともあります。しかしながら、三半規管が弱い方はめまいを感じてしまったり眼精疲労が伴うケースも多々あります。
5-5:催眠療法
自然な形で潜在意識とつながり、病の原因となった核心を解放します。解離性同一性障害は、言わば、トラウマとなった体験から身を守る為に、無意識に体験から自分を解離させ、「なかったこと」にしてしまっている状態です。
弊社はカウンセリングオフィスですが、この催眠療法との併用を一番おすすめしています。幼少期の傷を癒すだけではなく、溜まっている心の辛さの解放、身体の疲労感の緩和等の効果も見込めます。きっと、疲れ切ってしまっている状況ですので催眠療法の力を借りて解離性同一性障害の緩和をすることで精神的な負担が少なく心のケアをすることができます。
このトラウマ(心的外傷)を根本的に癒すことこで、本当に病に向き合い、明るい明日へと踏み出す第一歩です。
⑥解離性同一性障害の改善方法
解離性同一性障害の改善方法についてお伝えをします。弊社では、徹底したヒアリングそして心理療法(催眠療法)を相談者に合わせてアプローチをすることで改善を目指しています。
STEP1:初回のヒアリング
初回のヒアリングでは、今の状況を細かく教えていただくことから始まります。例えば、一番解決をしたいこと、最終的なゴール、困っている具体的な症状、既往歴、家族構成などひとつ、ひとつを丁寧に紐解いていきます。
自分たちでは大したことないように感じたとしても時には改善の糸口になることもあるので、どんな些細なことでも教えてください。
STEP2:傾聴のカウンセリング
お話を聞きながら、心の整理を一緒に行います。そうすることでこれまで溜まっていた心の辛さや誰も理解してくれなかった苦しさを緩和することができます。
孤独は症状や状況を更に悪化させてしまいますので、このSTEP2ではお互いを信頼しあえる環境を作ることを大切にしています。
STEP3:催眠療法
催眠療法を行うと、それぞれの人格と自由に話すことができるようになります。憑依性の場合は、憑依の原因となっている人格と話をしながら本人の希望やなぜ原因を引き起こしているのかを特定していきます。
憑依性と言っても人格ですので、ひとりの人としてしっかりと話を聞くことが症状を改善することに繋がります。また、非憑依性の場合もひとり一人の人格と話をします。
話をしながら、何を望んでいるのか、どんな風に人生を生きていきたいのかなども煮詰めていきます。攻撃性が高い人格や、自殺を仄めかす存在がいる場合は最優先に改善をします。
STEP4:本人の意思を明確にする
弊社の場合は、人格を統合することが絶対ではありません。ゴールは社会で楽しく、豊かに過ごせることだと考えています。例えば、プログラミングが得意な人格がいれば、プログラマーとして仕事をしてもらう方法もあります。
直感力が優れているのなら、占い師としての道もあります。このようにひとりの人格にすることを前提とするのではなく、中にいる人格達が何をしたいのか、そして第三者の視点から何をすると幸せで楽しく生きることができるのかを考えていきます。
STEP5:催眠療法で整える
人格を統合することに合意をした場合は、催眠療法で解離性同一性障害の改善を行います。弊社の場合はEMDRやタッピングは基本的に行いません。それは、改善に対するアプローチが弱いと判断をしているからです。
これは個々の見解になりますので、弊社が正しいかは分かりません。しかし、催眠療法に認知行動療法や弁証法的行動療法という心理療法を組み合わせた方がかなり効果があるので、解離性同一性障害の改善方法は催眠療法をメインにしています。
STEP6:未来に向けたコーチング
解離性同一性障害を改善したとしても、社会で生きていくためにはコミュニケーション能力を高める必要があります。そうすることで、社会でのストレスを減らすことができたり、人間関係のトラブルの回避を行うことができます。専属の講師やカウンセラーが対応をしています。
⑦弊社の解離性同一性障害に対しての考え方
何が正解か、不正解なのかは分かりません。正しい方法なのかもわかりません。しかし私たちはクライアントが一番幸せになれる生き方をともに模索をすることを最も重要視しています。
解離性同一性障害は人格を統合することが中心ですが実際は上手にシーン別に使い分けて日常生活を楽しんでいる人たちもいます。
また本人の潜在意識が生きることを拒否しているのでしたら、他の人格たちが人生を楽しめる環境を整えてあげることも大切だと思います。本人を無理やり引き合いに出すと自殺をしたり家族との不仲で苦しむ場合が多いにあります。
そう考えると、どんな療法が正しいのかではなく向き合うところは全てクライアントが一番幸せになれる方法を模索することだと私たちは考えます。
⑧解離性同一性障害の回復を目指しませんか?
解離性同一性障害を知っている人は、ほんのひと握りです。むしろ、本人は誤解を受けることすらあります。社会的な理解を得にくく、特効薬も手に入らないなかで、苦しい症状に悩む方がいます。
この記事では、この病気の症状・原因・回復へのステップをまとめてきました。症状にお困りの方、また周りの方の症状に思い当たる方がいらっしゃいましたら、おひとりで悩まずに、弊社にご相談ください。
正しい理解と、適したケアさえあれば、回復は十分に期待できます。ぜひ、明日への明るいステップをいっしょに歩みましょう。
この記事を書いたライフファクトリーとはどんな会社?と気になった方は、ライフファクトリーの特徴のページをご覧ください。
公認心理師:吉田澄央
ライフファクトリー東京代表。公認心理師でもあり催眠療法士として活躍。「改善するカウンセリング」の実現のために、今まで1万回を超える精神科診療に同席。現役の心理師でありながら日平均来院数1000人以上の精神科医院にて、患者相談部門の事務長を任される経歴を持つ精神科医療分野のプロフェッショナル。
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