あなたは、人間関係で悩んだことありませんか。社会で生きていくために、必要になるのが人との関係性構築や距離感の取り方ですよね。わかっていてもなかなか難しい..そう思うことはありませんか。
実は、今あなたが感じている生きづらさの原因は幼いころの環境、そして取り残された心が関係しています。この文章を最後まで読むと、あなたの人間関係の悩みの種がどこにあるのかがわかるかもしれません。
もし、
・人間関係に疲れやすい
・人に言えないが孤独感に悩んでいる
・人との関係性構築や距離感の取り方に悩んでいる
といったお悩みがある場合、愛着障害が根底の原因になっているかもしれません。
愛着障害は、乳児期(0歳~1歳半)、幼児期(5歳くらいまで)の養育者との関係性が原因で起きるものですが、修復は何歳であっても大人になっても可能と考えられています。さて、続きを読んでいきましょう。
目次
①愛着障害とは人間関係が苦手な人が抱えやすい
乳児期(0歳~1歳半)、幼児期(5歳くらいまで)に親などの自分を育ててくれた人との絆が少ない、共にした時間が短いなど、愛着形成ができなかったことで現れる困難を表します。
愛着形成は、養育者と子どもとの間の相互作用によるもので、愛着障害は関係性による障害です。
養育者の育て方、子ども、どちらか一方に問題があるというものではなく、その子の生まれもった特性と養育者の育て方との相性の問題となります。
そのため、同じ養育者、同じ育て方による兄弟の一人だけ愛着障害となる事例も多くあります。
しかし、養育者である大人と子どもでは、子どもが圧倒的に無力であることから、養育者の接し方が大きな原因の1つとなることは間違いありません。
愛着障害による影響は、子ども時代だけでなく、大人になっても影響が残ります。愛着障害が原因となり、人との関係を築くことが困難だったり、社会生活をうまく送れないことがあります。
症状が発達障害と似ていることから、発達障害と診断されている方が、実は愛着障害であったという事例も珍しくありません。参考:第4分科会 厚生労働省
②愛着障害の症状は体と心の両方に現れる
愛着障害は、人間関係で困難を感じる、疲弊してしまうといった症状が出ます。ストレスにより体にも症状が出たり、うつ病といった精神疾患を引き起こしてしまう要因ともなっています。
2-1:体に起きる愛着障害の症状
・多動
・髪を抜く
・危険行動
・身体が弱い
・爪をかじる
・胃腸が弱い
・頭を壁に打つ
・言葉が出ない
・自傷行為がある
・風邪をひきやすい
・片付けができない
・身体をかきむしるなど
・発達障害と似た行動がある
2-2:心に起きる愛着障害の症状
・受け取り方が極端
・自己肯定感が低くなる
・意地っ張りで人を頼れない
・人からの言動に傷つきやすい
・過去の失敗や恐怖にとらわれやすい
・怒りを感じると建設的な話し合いができなくなる
・人を笑わせるために自分を卑下した道化役を演じる
2-3:日常生活の愛着障害の支障について
・自己肯定感が低い
・養育者に敵意をもつ
・物事を全否定してしまう
・距離を置きすぎてしまう
・常に人の顔色を伺ってしまう
・親に反抗的な態度を取り続ける
・逆に養育者に従順な態度を取る
・人との距離感がうまくとれない
・極端に信頼を寄せすぎてしまう
・自分で決断することができない
・依存しやすく過食をしてしまう
・人の一部分をみて、過剰に反応する
・決断をしても後悔ばかりしてしまう
・精神疾患の発症要因になることがある
(うつ病、心身症、不安障害、境界性パーソナリティー障害、依存症)
・自分が子育てをする際に困難を抱えやすい
・人の期待に応えらえない自分に負い目を感じてしまう
③愛着障害には3つのタイプがあります
愛着障害には、いくつかタイプ別の症状があります。愛着形成が行われる乳幼児期の、子どもと養育者との関わり方により、タイプが分かれるものと考えられています。 ※参考DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル
3-1:人に甘えるのが苦手な「愛着 回避型」
乳幼児期、養育者にあまり関心を持たれず自分の感情を受け止めてもらえないと人に甘えることが苦手になってしまいます。
そして、嫌だった記憶に蓋をしてしまうので、ネガティブ(悲しい・不安な・怒りを感じた)な体験を思い出すように言われても、思い出すのに時間がかかります。
周りの人に感情を表現したり、頼ることが苦手だったり、人間関係で孤立しがちになることが多いのですが、実は心の底では人の愛情を欲しています。
3-2:人の目を気にしやすい「愛着 恐怖型」
乳幼児期、養育者に虐待を受けたり強く叱責されることが多く、自分の感情を表に出すことができなかった場合に人目を気にしやすくなります。
人にネガティブな体験を思い出すように言われると、事細かに感情的に話す。むしろ楽しい記憶を話すことの方が難しいことはありませんか。
人から自分がどう思われているかを常に気にしてしまうため、人間関係にいつも不安を感じており疲弊しやすいです。自己評価が低いなどの気持ちを感じているのなら、このタイプに当てはまるかもしれません。
3-3:人の期待に応えようとする「愛着 注目獲得型」
乳幼児期、自分の言動に対して、養育者の気分によって肯定されたり、叱られたり、一貫性のない関わりをされていたことはありませんか。
自分の言動に対する反応に一貫性がないため、自分の言動に自信が持てず、大人になってからも人の期待に応えるために、必死になってしまうことも多いです。
人の期待や関心を持ってもらうために労力を使いすぎて疲弊し、突然相手との関係を断ってしまったりすることがあれば、注目獲得型かもしれません。
当てはまるタイプはありましたでしょうか。もしも当てはまったとしても、自分を責めたり、自信をなくす必要はないので安心をしてください。
大切なことは今の自分を受け止めてあげることです。そうすることで、次の一歩を踏み出すことができるようになります。次は、愛着障害の原因について読み進めてみましょう。
④愛着障害の原因とは?
愛着障害の原因は、愛着形成が行われる乳幼児期における養育者との関わりとなりますが、それがどのように子どもの精神に影響を及ぼすのでしょうか。
4-1:特定の養育者からの安定的な愛情の欠如
乳幼児期、特定の養育者から愛情をもって接されていると、子どもはその養育者に愛着を持つようになります。そうすると、子どもはその養育者に甘え、依存するようになります。
甘える、依存するといったやり取りを通して、人とのかかわり方、人とかかわる楽しさや喜びを感じることを学習していきます。
さらに幼児期になると、愛着を形成した相手に対して、自分の要求を伝えたり、相手の要求を受け入れたりを通して、表現力やコミュニケーション能力が育ちます。
こうした過程が無い、もしくは不安定な状態で過ごすと愛着が安定的に築かれません。乳幼児期から幼児期において、特定の養育者からの安定的な愛情が無いことが、愛着障害の原因になっていると考えられています。
4-2:自信を持つことができない
養育者からの愛情が不十分だと、養育者に自分が受け入れられているという実感が少なくなります。子どもである自分が、家族の一員として存在しているという感覚が得られません。
子ども自身、自分が属する初めての人間社会である「家族」の中の自分を「これでいいんだ」と実感できないのです。
つまり、アイデンティティが育たないまま成長することになります。このことが、後に人間関係を築いていく場面で問題となってきます。
4-3:自己肯定感が低い
養育者から虐待されたり否定されて育つと、自分は価値がなく不要な人間である、といった感情を抱えやすくなります。
結果として、自己肯定感が低くなり自分のことを大切にできなくなります。人と関わっていく中でも見放されるのでは、捨てられるのでは、といった愛着障害の症状でもある不安を感じやすくなります。
⑤愛着障害は自分で克服することができる理由
大人になってから、ご自身が愛着障害であることに気がついたという人は少なくありません。では、愛着障害は大人になってからも治療することはできるのでしょうか。
かつて、愛着形成には臨界期(1歳6か月程度の年齢)があり、それを過ぎると愛着形成することはできないといった考え方がありました。
しかしながら近年では、臨界期以降に他者が親代わりになって愛着修復の支援をすることによって、修復が可能であることがわかってきています。
大人になってから愛着障害に気がついた場合にも、信頼を寄せられる相手と時間を共にすることにより、修復が可能です。愛着の形成は生涯にわたって発達するものなのです。
⑥愛着障害の原因を知ることが最初の一歩
愛着障害についてお伝えしました。愛着障害は、自分の育った家庭環境に要因があることから、大人になってから家庭を持った際に、夫婦関係や子育てにも悪影響が出やすいといわれています。
もしかすると、恋愛に依存をしてしまったり相手に合わせすぎてしまうことも愛着障害が原因かもしれません。
大切なことは、愛着障害によりどのような影響が出ているのかを知り、あなた自身が受け止めてあげることなんです。
過去の影響が、今どのように出ているのかを知ることで、毒親に育てられた子が毒親になる、虐待されて育った子は自分の子にまた虐待する、といった負の連鎖を断ち切ることができるようになります。
自分の代で負の連鎖を断つためにも、そして本来のあなたの良さを見つけ出す一歩を踏み出してみませんか。
そのいっぽとして、愛着障害を克服する方法を書きました。ぜひ、参考にして愛着障害を克服できますように。
公認心理師:吉田澄央
ライフファクトリー東京代表。公認心理師でもあり催眠療法士として活躍。「改善するカウンセリング」の実現のために、今まで1万回を超える精神科診療に同席。現役の心理師でありながら日平均来院数1000人以上の精神科医院にて、患者相談部門の事務長を任される経歴を持つ精神科医療分野のプロフェッショナル。
吉田心理師の監修:「不安障害」記事一覧
吉田心理師の監修:「統合失調症」記事一覧
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